紫外線について考える2014.10.15

日が落ちるのが驚くほど早くなり、一日一日と着実に、秋の気配が深まっていくのを感じます。
紫外線は4月から9月の半年間で、年間紫外線総量の約8割が降り注ぐと言われています。
去りゆく夏のうしろ姿を見つめながら、改めて、紫外線について考えてみたいと思います。
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紫外線とは
太陽の光には、目に見える可視光線のほかに、目に見えない赤外線や紫外線が含まれています。可視光線より波長が長いものが赤外線、波長が短いものが紫外線(UV)です。
さらに、紫外線のなかでも、波長によってA、B、Cの3つに分類されます。

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※UV-C、UV-B、UV-Aの分け方には、いくつかの定義があります。

 

C領域紫外線(UV-C):100-280 nm
 …大気層で完全に吸収され、地表には到達しない。
B領域紫外線(UV-B):280-315 nm
 …ほとんどは大気層で吸収されるが、一部は地表へ到達する。生物にとって有害である。
A領域紫外線(UV-A):315-400 nm
 …大気層による吸収をあまり受けずに地表に到達する。
  UV-Bほど有害ではないが、長時間浴びた場合、健康への影響が懸念される。


フロンなどによりオゾン層の破壊が進行すれば、生物に有害な紫外線(UV-B)が地表に到達する量が増加してしまうため、オゾン層破壊は、私たちすべての生物にとって、とても深刻な問題です。


私たちの進化と紫外線
人種によって異なる、肌や眼の色。実は、私たちが紫外線と良好な関係を築くために、進化してきた“証”であると言えます。紫外線のメリット・デメリットを知ることで、人類の進化の歴史が見えてきます。

(1)紫外線のデメリット
生物にとって有害なUV-B。具体的には、皮膚や眼への健康被害を及ぼすことで知られています。
急性のものとして日焼け(サンバーン、サンタン)、長年の蓄積による慢性障害として、白内障や皮膚がんなどの原因になることがわかっています。日傘やサングラス、日焼け止めなどを用いて、熱心に紫外線対策を行われている方も多いのではないでしょうか。

(2)紫外線のメリット
広く知られたデメリットの反面、あまり知られていないのが紫外線のメリットです。
紫外線には、健康な生活を送る上で不可欠な栄養素「ビタミンD」を体内に生成する作用があります。
“サンシャインビタミン”とも呼ばれるビタミンDは、カルシウムの吸収を手伝い、骨の健康を保つために働いています。それに加えて、新陳代謝や免疫力を高める効果や、ダイエットにも有効な働きを持つといった報告が多くなされるなど、近年、ビタミンDへの注目が高まっています。
このビタミンD、魚類やキノコ類などの食べ物でも補うことができますが、現代日本人の一般的な食生活では慢性的に不足しがちだと言われています。
そこで、効果的にビタミンDを摂取する方法として、短時間の日光浴が推奨されています。
仮に、成人に必要な1日のビタミンD摂取量すべてを体内で生成する場合、どれくらいの日照時間が必要なのでしょうか。国立環境研究所が発表したデータによると、12月の正午では、那覇で8分、つくばで22分、札幌では76分の日光浴が必要とのことです。紫外線量の多い夏季とは異なり、これからの季節は意識的な日光浴が健康の秘訣となるかもしれません。

参考:独立行政法人国立環境研究所『体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定』



shigaisen_002紫外線を浴びる量は、多すぎても、少なすぎてもいけない。
これこそが、私たちの肌や眼の色が人種によって異なる理由です。
肌や眼の色の違いとは、すなわち、紫外線からDNAを守る役割がある「メラニン色素」の量の違いです。
ネグロイド(黒色人種)発祥の地であるアフリカは、赤道付近の強烈な紫外線が降り注ぐため、たくさんのメラニン色素によって紫外線のリスクから身を守ろうと、肌も眼も黒く進化をしました。
反対に、コーカソイド(白色人種)発祥の地である北部ヨーロッパは、極端に日光照射量が少なく、ビタミンD欠乏によるクル病などの危険性に対抗するため、メラニン色素の少ない白い肌と青い目によって、わずかな日光をより多く吸収できるように進化を遂げています。
私たちのからだは、紫外線の長所も短所も知り尽くした上で、おのずと住む環境に適した姿で生まれてきているのだと思うと興味深いですね。



照明器具と紫外線
紫外線は、太陽光のみならず、白熱電球や蛍光灯が放つ光にも含まれています。
次に、照明器具の観点から紫外線について考えてみましょう。

(1)紫外線を含まないLEDの光
紫外線を含む光源の場合、虫の誘因や、照射物に退色・変色を引き起こすことなどが問題視されてきました。特に、化粧品やアパレルの店舗においてこの問題は深刻であり、商品の大量廃棄にも繋がっていたそうです。
対して、新しい光源であるLEDの光は、紫外線をほとんど含みません。これは、光源において革新的な長所であり、LEDの需要を高めた大きな一因であるといえるでしょう。
長時間の照射を前提とした、日常空間で使用する照明器具に限っていえば、この先はLEDを筆頭に、着々と“脱”紫外線の歩みを進んでいくのではないでしょうか。

(2)独自の分野で輝く紫外線の光
一方で、紫外線の光は、現在、特化した分野において大活躍しています。
代表例として、殺菌灯が挙げられます。紫外線のなかでも253.7nm付近の光は、殺菌作用が非常に強いことで知られており、清涼飲料水や食品容器の殺菌、手術室の無菌化などに応用されています。
他にも、偽造紙幣を判別するためのブラックライトなど、紫外線は意外なところで効果を発揮しています。


先月開催された「2015年春夏パリコレクション」。日本から初参加したブランド『アンリアレイジ』のショーでは、デザイナーの森永邦彦さんがライゾマティクスの真鍋大度さんとコラボし、紫外線によって真っ白なドレスに模様を描くという演出を行い、話題を集めました。
このように、現在は様々な分野に羽を広げている紫外線ですが、以前はその有害性ばかりに焦点が当てられ、同じ不可視光線の赤外線に比べると、実用化が遅れていたそうです。
ヒトの肌や眼の色が紫外線に応じた進化を遂げたように、この先、紫外線の長所とも短所とも上手に付き合う方法が私たちの中で当たり前のように浸透していくのではないでしょうか。
紫外線のさらなる可能性に期待しながらも、来年の夏こそは、しっかりと紫外線対策を行いたいと思います。

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