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MARIOT EYES
2013年11月30日更新

影について考える-1 −わたしたちと影−

すっかり日が暮れるのが早くなりました。
足早に過ぎ去る秋を名残惜しく見つめながら、今回は「影」について考えます。

障子に手で作ったきつねの影を映したり、夕方の校庭で影踏みをして遊んだり、幼いころは夢中になって影を見つめるひと時がありましたが、最近では意識することがほとんどなくなったように思います。

切っても切り離せない私たちと影。改めて見つめてみましょう。



1. 影を操るアーティストたち

小説や舞台、映画などでは、演出の一つとして影が登場することがあります。
時に未来を暗示し、時に心情を代弁する影は、主として人の内面を映し出す鏡、「もう一人の自分」として捉えられている場合が多いように思います。

また、近年では、影そのものを主役として扱うアーティストの活躍も目立っています。
ここでは、3組のアーティストの作品をご紹介します。

『10番目の感傷(点・線・面)』(クワクボリョウタ氏、2010年)

光源をのせた鉄道模型が線路の上をゆっくりと走る。
照らし出すのは、床に並べられた日用品の数々。
壁や床、天井に投影された影は観客を包み込み、車窓から眺める街並みのごとく静かに移り変わる。
影と時間を“共有”できる作品。

クワクボリョウタ オフィシャルホームページ:http://www.vector-scan.com/

『Kage’s Nest』(plaplax 、2001年)

空間に広がる大きく丸い光の広場。
一歩足を踏み入れると、広場の様子は一変する。
自分の影から飛び出しては周囲の暗闇へと消える謎の影たち。
作者はこの影を“あなたの分身”と呼ぶ。

plaplax オフィシャルホームページ:http://www.plaplax.com/

『LIGHT & SHADOW』シリーズ(山下工美氏)

一見、無作為に思える対象物に光を当てることで、思いもがけないシルエットが浮かび上がる作品群。

ビックリマークがクエスチョンマークに、何の変哲もない少ししわのある折り紙が人の横顔に。光量・照射角度・形状・配置、すべてが緻密に計算された影の世界。


左:『CITY VIEW』(2003年)/中:『QUESTION MARK』(2003年)/右:『ORIGAMI』(2011年)

Kumi Yamashita オフィシャルホームページ:http://www.kumiyamashita.com/


これらの作品が映し出す世界は、影の新たな魅力を引き出し、普段私たちが、当たり前すぎてあまり気にかけていない影の存在に気づかせてくれます。



2. 影のインスタレーション

ここでは、2008年に遠藤照明にて開催されました、建築家と照明デザイナーによるコラボレーション作品(「くらしとあかり」プロジェクト)を2つご紹介します。

『留守番する光』(トラフ建築設計事務所[建築家]×村角千亜希[照明家])

私たちが出かけている間、部屋には知らない景色が広がっているはず。
美しい木漏れ日、夕日に照らされ物体が落とす長い影。
蓄光塗料を塗ったテーブルを用いて、それらのシルエットを暗闇に浮かび上がらせるというインスタレーション。
家に帰ってきて部屋の明かりをつけるまでの暗闇の時間。外出していた間の光の余韻がテーブルに残っていたら...
毎日の一瞬を彩るために、影が活躍する作品。


『シャドー・パーティション』(棚瀬純孝[建築家]×中島龍興[照明家])

その名の通り、壁を立てるのではなく、陰影によって空間を緩やかに仕切るという提案です。
先に寝てしまった子どもの様子を感じながら、テーブルでコーヒーを飲む。お互いを邪魔しない、けれども断絶してない。
心地よい家族のつながりが浮かび上がるインスタレーション。


左:『留守番する光』
右:『シャドー・パーティション』 撮影:和泉孝之(スタジオドアーズ)

参考:遠藤照明「くらしとあかり」プロジェクト:
http://www.endo-lighting.co.jp/kurashitoakari/

両作品ともに、生活のひと時を切り取っている点が興味深いですね。
光環境を考えるとき、つい光のことばかり考えてしまいがちですが、少し視点を変えてみると、影で生活を豊かにすることができるのかもしれません。


3. 身の周りの影

影の新たな可能性を押し広げてくれるような作品や提案をご紹介しましたが、いかがでしたか。
少し意識してみると、皆さんの周りにもきっと素敵な影が見つかるはずです。

【影遊び】 子供のきつねと大人のきつね。親子の会話が聞こえてきそうです。


【あかりの影】 「光のデザイン」は、同時に「影のデザイン」とも言えます。
影がゆらぐ様子も魅力的です。


【モノの影】 人工照明が作り出すきめ細やかな影。太陽が作り出す壮大な影。


【カラーシャドー】 影のマジック。好奇心はとまりません。


【シルエット】 逆光で浮かび上がるシルエット。構造を美しく映し出します。


【生活を彩る影】 建物からこぼれるあかり。
生活の様子は影となり、街の景色を豊かにします。



最後に、ステンレスのアームが美しいアールを描く照明器具「アルコ」をデザインしたことで知られるアキッレ・カスティリオーニ氏が残した言葉をご紹介します。


音楽が 音と休止からできているように、照明は光と影からできている。光だけでは音楽にならないよ

『アキッレ・カスティリオーニ 自由の探求としてのデザイン』多木陽介著





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