間接照明 3つのツボ2015.10.19

日本を代表する照明デザイナー面出薫氏は、『光のデザイン・ヴォキャブラリー:LPAの仕事 1990-1998』において、間接照明をあえて”かんせつショーメイ”と表現し、以下のように述べています。

「かんせつショーメイ」と表現したのは、「間接照明」という言葉が、随分と誤解されて使われていると思えるからである。

少しドキッとする言葉ですね。
そこで、今回は基本に立ち返るとともに、間接照明の設計における”ツボ”を探ってみたいと思います。
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間接照明って?
そもそも間接照明とはどんな照明のことでしょうか?
”かたい話”と”やわらかい話”、二つの視点でご説明します。

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間接照明、そしてその対義語にあたる直接照明。これらの照明用語は、以下のように定義されています。

間接照明(indirect lighting)
大きさが無限と仮定した作業面に、発散する光束の0~10%が、直接に到達するような配光をもった照明器具による照明。

直接照明(direct lighting)
大きさが無限と仮定した作業面に、発散する光束の90~100%が、直接に到達するような配光をもった照明器具による照明。

参考:JIS Z 8113:1998 照明用語(JIS検索ページ)


光源が直接見えないものをすべて間接照明と呼んでいた人も多いのではないでしょうか?
実は、作業面に到達する光束量の「割合」によって厳密に区別されているのです。
ちなみに、10~40%は「半間接照明」、40~60%は「全般拡散照明」、60~90%は「半直接照明」と呼びます。
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しかしながら、○%という照明学的表現だけではやっぱりわかりづらい…
そこで、間接照明を自然界の中の光に例えてみたいと思います。

「光源=太陽」とすると、

・直接照明…直射光
・半間接照明、全般拡散照明、半直接照明…曇り空・木漏れ日(太陽の一部が隠れている)
・間接照明…日の出直前・日の入直後(太陽が隠れている)・月(自らは発光せず、太陽の光を反射して輝いている)

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地平線の下に隠れた太陽から空にかけて広がる大きく柔らかな光は、地球規模での「間接照明」ということができるでしょう。
この自然界における間接照明は、一日のどのようなタイミングに見られるでしょうか?
その答えを考えると、間接照明の役割が自然と浮かび上がってきます。


間接照明の役割
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自然界の間接照明は、朝と夜の「切り替え」のタイミングであらわれます。この「切り替え」こそが、間接照明が担う役割のキーワードなのではないでしょうか?
具体的な空間を例に、確認してみましょう。


(A) オフィス

<間接照明が使われている場所>

エントランス・廊下・休憩室

<間接照明の役割>

仕事の切り替え

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(B) 商業施設

<間接照明が使われている場所>

大型店舗の通路・エレベーターホール/店舗内のメインディスプレイ・壁面

<間接照明の役割>

境界・領域を強調する/動線を意識させる/空間を大きく明るく見せる

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(C) 医療・福祉施設

<間接照明が使われている場所>

廊下

<間接照明の役割>

眩しさを抑える

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(D) 居住空間(ホテル・マンション・住宅)

<間接照明が使われている場所>

エントランス・寝室・トイレ

<間接照明の役割>

気持ちの切り替え

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間接照明は、その名の通り、光を「間接」的に用いるため、直接照明に比べて効率が下がります。そのため、事務室や工場など、作業面の照度を重視する空間ではあまり用いません。
間接照明は、照度だけでは計ることのできない付加価値を空間に与えてくれているようです。

<間接照明の役割>

・「ONとOFF」の切り替え
・デザイン的なテクニック(境界・領域の強調、明るさ感の獲得)
・光環境の適切化(拡散光による眩しさ軽減)



間接照明 3つのツボ
間接照明には、以下のような手法があります。

<間接照明の手法>
・コーブ照明
 「天井面」を明るくする
・コーニス照明
 「壁面」を明るくする
・バランス照明
 「天井面」と「壁面」の両方を明るくする
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間接させた光を思い通りに操る難しさは、きっと皆さんご存知のことでしょう。
ここでは、間接照明を設計するときに、これだけは押さえておきたい”3つのツボ”をご紹介します。

(1) クリアランス

光源と照射面との距離。
クリアランスが小さいと、効率やメンテナンス性が低下するだけでなく、光の伸びも得られない。
間接照明がつくり出す美しく緩やかな光のグラデーションには、十分なクリアランスが必要不可欠である。
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(2) カットオフライン

光源と遮光部先端を結んだ直線。
光源が見えるか見えないかの境界線であり、設計時に重要な手がかりとなる。
適切に制御をしないと、延長線上の天井面もしくは壁面に光のエッジが生じてしまう。
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(3) コンディション

照射面の仕上げの艶感。
少しでもツヤがあると、驚くほど光源が映りこんでしまう。
間接照明における照射面の仕上げは「完全なツヤ消し(マット)」が鉄則。
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<間接照明 3つのツボ>

(1) クリアランス
光源と照射面との距離を十分に確保する。
(2) カットオフライン
光源が見えていないか、光のエッジが出ていないか。カットオフラインで確認しよう。
(3) コンディション
照射面の仕上げは必ず「ツヤ消し」に。



設計したことがある人の数だけ失敗談があるともいわれる間接照明。
手ごわい相手ではあるものの、間接照明がつくり出す柔らかな光はやっぱり魅力的。
定義や役割を正しく理解し、3つのツボをしっかり押さえることが、きっと成功への近道になるはずです。
美しい光のグラデーションを目指し、ぜひチャレンジしてみてくださいね。