照明計画2014.08.08
必要な箇所に必要なだけの光を配置する「適光適所」。
機能に導かれた照明計画は美しく、同時に省エネも実現します。
ここでは、店舗を例に、教科書のような照明プランをご紹介します。
店舗の構成
店舗の構成は、大きく8つに分類されます。
なかでも、以下の4つは、空間全体の印象に大きな影響を与えています。
A:メインディスプレイ・VP(ビジュアルプレゼンテーション)
…お店の顔
B:壁面什器・柱周り
…空間演出に欠かせない
C:リースライン際
…導入効果を高める
D:店内平場
…購買意欲を高める
光のバランス
光のバランス、すなわちベース照明と演出照明の比率は、店舗のコンセプトと密接に結びついています。
全体的に明るく均一な空間なのか、暗めでメリハリのある空間なのか。
光のバランスに着目しながら実際の店舗を訪れてみると、照明計画による効果の違いを体感することができるでしょう。
VMDと照明計画
店舗=店(みせ)は、”見せ”や”魅せ”とも言われます。
利益を上げるためには、売りたい商品や店舗イメージを、顧客に正確に訴える光が必要です。
VMD
VMDとは、Visual Merchandising(ビジュアル・マーチャンダイジング)の略であり、顧客の購買意欲を促進するために、商品を視覚的に美しく演出する手法を指します。
VMDは、以下の3つの要素で構成されています。
(1)VP(ビジュアルプレゼンテーション)
ショーウィンドウやメインディスプレイなど、最も顧客の視線を集める「お店の顔」。
お店のコンセプトやシーズンテーマを表現する場となる。
(2)PP(ポイントプレゼンテーション)
IPの中の代表する商品を強調して見せる場。コーナー横のトルソーやテーブル・棚の上など。
(3)IP(アイテムプレゼンテーション)
棚やハンガーラックなど、定番陳列を指す。VPやPPで展開された商品を、顧客が実際に手に取り比較検討する場。
商品が分かりやすく、選びやすく陳列されていることが重要。
つまり、顧客の目線が、VP→PP→IPという順で辿っていくような視覚的操作が必要となります。
これら3つの要素を意識することで、光が必要とされている場所が自然と見えてきましたね。
それでは、右図のような店舗を例に、実際に照明計画を行ってみましょう。
■条件・要望
・若者・ファミリー向けのアパレル店舗
・ショッピングセンターへ出店する
・天高3.8m
・ダウンライトのみで構成
・平均照度:ベース照明のみで600Lx以上確保
・色温度3000K
・メリハリのある空間
まず、演出照明(PP・IP)を決定します。
人が明るさの対比を感じるためには、3~5倍の照度差が必要といわれています。
演出照明は、ベース照明の3~5倍の照度がとれる器具を選定しましょう。

照明器具は照射物からどれだけ離せばいいのか。
演出照明の”引き”の距離は、以下の方法で求めます。
(1)壁面什器のどの辺りを中心に当て込みたい点Pを決定する。
(2)点Pからおよそ30°※で線を引き、天井面との交差点をQとする。
(3)照射物から点Qまでの距離dが照明器具の”引き”の距離となる。
○今回はこのユニバーサルダウンライトを使用!
ベース照明を決定します。
計画条件により、平均照度600Lx以上確保できる器具を均等に配置します。
○今回はこのダウンライトを使用!
最後に、VP照明を決定します。
ファサードやVP部分は、店舗の中の最重要ポイント。
ベース照明の10倍以上の照度が取れる器具を選定し、光で際立たせましょう。
○今回はこのユニバーサルダウンライトを使用!
完成です。
教科書のような、基本的な照明計画ができました。
この明るさの比率を操作することで、店舗の印象が大きく異なります。
・比率が小さい…フラットな空間
・比率が大きい…メリハリのある空間
今回、照明計画した店舗を3次元の照度分布図で確認してみましょう。
全体的に明るいなかにも、光のメリハリがある空間になっていることがわかります。
照明計画の正解は一つではありません。
今回ご紹介したのは、ベース照明、演出照明、VP照明のすべてを用いた計画でしたが、冒頭の「光のバランス例」を参考に、ベース照明のみ、演出照明のみと、コンセプトに合わせてアレンジしてみてはいかがでしょうか。
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