涼の光について考える2013.08.30

今年の夏は記録的な猛暑が続きました。そんな夏を乗り切るため、光が一役買うことはできないだろうか…
身近な夏の光に、涼しさを演出する光のヒントがあるかもしれない。
そんな思いをきっかけに、今回は“ 涼の光 ”について考えました。
涼の光top


花火
02.線香花火夏の風物詩・花火は、やはり“ 涼の光 ”の代表格です。
夜空に大きな花を咲かせる打ち上げ花火は蒸し暑さを勢いよく吹き飛ばしてくれますし、手元で揺らめく線香花火は不思議と暑さを和らげてくれます。
線香花火の光は短い時間で次々と表情を変えますが、この燃え方の段階ごとに呼び名がついているそうです。点火直後、真ん中に大きな丸い玉ができた状態を「牡丹」、玉が激しく火花を発する線香花火のクライマックスを「松葉」、火花の勢いが弱まり、光が下にしな垂れる状態を「柳」、そして火が消える直前、線香花火の最後のまたたきを「散り菊」と呼びます。牡丹・菊といった春や秋の花が登場したり、お正月の印象が強い松に例えられているのが興味深いですね。これも夏の暑さを忘れさせてくれる一つの要因かもしれません。


蛍、くらげ

エネルギーほとばしる夏の太陽光の対極に位置するのが、小さくて儚げな蛍の光ではないでしょうか。
この蛍の光り方が「1/fゆらぎ」であるという話はご存知の方も多いと思いますが、癒しだけではなく、私たちに涼風を届けてくれるような気がします。
「1/fゆらぎ」は涼しさとも何か関係があるのでしょうか。
「1/fゆらぎ」の効果について科学的な証明はほとんどなされていませんが、自然界にある様々な音の中では、小川のせせらぎや波の音がそれに当たるのだそうです。もしかしたら、私たちは蛍のゆらめく光を見ながら、無意識に水を感じ、それが涼しさに繋がっているのかもしれません。
また、蛍に代表される生物の発光は電気による光源と比較すると効率が非常に良く、熱をほとんど出さないため「冷光」と呼ばれるそうです。そういう意味では、蛍の光は物理的にも“ 涼の光 ”なのですね。
同様に、くらげの光も「冷光」であり、くらげ特有の動きと相まって、涼を感じる光といえるでしょう。


04.東京タワー_冬03.東京タワー_夏東京タワー
東京タワーのライトアップには「冬バージョン」と「夏バージョン」の2パターンがあるのはご存知でしょうか。
よく知られているオレンジ色のライトアップはいわゆる「冬バージョン」。「夏バージョン」はメタルハライドランプを使用し、白色を基調にすっきりと涼しげなイメージが特徴です。このように東京タワーは光の「衣替え」を行っているのです。また、「ダイヤモンドヴェール」と呼ばれる金・土・祝日限定のライティングにより、夏場は東京タワーが青色に輝く日もあり、とても涼しげです。

左:夏バージョン / 右:冬バージョン
写真:東京タワーオフィシャルホームページ



さて、前述したような夏の光に、“ 涼の光 ”のキーワードを探してみましょう。

 ○細い、小さい、儚い
 ○揺らめき、ムラのある動き、1/fゆらぎ
 ○光の残像、余韻
 ○色温度

いかがでしょうか?
“ 涼の光 ”の姿が少しずつ見えてきたような気がします。

では、これらのヒントを実際の空間に応用すると、私たちでも“ 涼の光 ”をつくり出すことは可能でしょうか。
最後に一つのエキシビションをご紹介します。

05.「液体のようなあかり」軽

撮影:和泉孝之(スタジオドアーズ)【※を除く】


これは、2008年に遠藤照明にて開催されました、建築家の藤本壮介氏と照明デザイナーの石田聖次氏によるエキシビション『液体のようなあかり』(「くらしとあかり」プロジェクト)です。

この空間では、先端のみ発光部分を露出させた光ファイバーを天井から多数吊り下げることで光に揺らぎやムラを持たせ、液体をイメージした光を生み出していますが、前述したキーワード「細い、小さい」「揺らめき」「光の残像」「色温度」といった“ 涼の光 ”の条件を見事に満たしています。実際、このエキシビションは8月に開催されましたが、会場空間はとても涼しく感じられたそうです。



現在、照明はLEDという光源の出現により、より自由な制御が可能となりつつあります。明るさの調整はもちろんのこと、外光の効果的な利用、時間による管理などが当たり前になっていくでしょう。
今回、“ 涼の光 ”のキーワードに「1/fゆらぎ」を挙げましたが、照明制御によっても、木漏れ日のような光や涼しさを感じるような「1/fゆらぎ」を持つ光を生み出すことが可能かもしれません。
今以上に、光が涼しさを手に入れるツールとして活躍する時代が来るかもしれませんね。