目の健康を守る光(1) ―「子どもの目」編―2016.06.29

私たちの目は、光を捉え、明暗や色、形などを識別するという、とても大切な役割を担っています。
今回は、“目のプロ”である眼科医 井手武先生(南青山アイクリニック副院長)にご協力いただき、「目の健康を守る光」について、全2回でお届けします。
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協力:南青山アイクリニック副院長 井手武先生


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第1回 目の健康を守る光 ―「子どもの目」編―

第2回 目の健康を守る光 ―「働く目」「老眼」編―

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第1回 目の健康を守る光 ―「子どもの目」編―


目のしくみ
私たちの目の中は、光をどのように透過し、情報として処理しているのでしょうか?
まずは、目のしくみについて知ることから始めましょう。

(1) 光を認識するしくみ

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1. 光は、角膜で大きく屈折し、瞳孔を通って目の中に入る。

※その際、虹彩が瞳孔の大きさを調節し、目に入る光の量を調節している。


2. 瞳孔を通過してきた光は、水晶体で屈折し、硝子体を通り、網膜で結像する。

3. 網膜では、桿体細胞・錐体細胞という2種類の視細胞によって、光の明暗や色、形などを識別する。

○桿体(かんたい)細胞
暗いところで働き、光の明暗を識別する。
○錐体(すいたい)細胞
明るい所で働き、光の色を識別する。赤を感じる錐体(L錐体)、緑を感じる錐体(M錐体)、青を感じる錐体(S錐体)の3種類がある。


4. 視細胞によって識別された光の情報は、視神経によって脳へ伝達され、像として認識される。


私たちの体のなかで、単位重量当たりの酸素消費量が最も多いのは、目の網膜だそうです。
光を認識するために、目にはたくさんのエネルギーが使われていることがわかりますね。


(2) 目のピント調節のしくみ

水晶体は毛様体(もうようたい)という組織によって支えられています。
毛様体の「毛様体筋」という筋肉が、水晶体の厚みを変えることで光の屈折を変え、網膜上でピントが合うように調節されます。

○屈折異常
屈折の力と網膜までの距離が合わずピントがぼけてしまう状態を屈折異常といいます。屈折異常は、近視、遠視、乱視の3種類に分類されます。
○老化現象
加齢に伴い、水晶体が硬くなることで屈折の力が弱まり、ピントが合う距離の範囲が狭くなった状態を老眼といいます。


(3) 目の疲労のしくみ

ピント調節のために働く毛様体筋は、遠くを見るときは緩んでいますが、近くをみるときは収縮します。パソコンや読書など近くを長時間見つめる作業は、毛様体筋がずっと収縮していることになるため、目の疲労を引き起こします。
目に入る光の量を調節する虹彩も同様です。暗いところではより多くの光を求めて瞳孔を広げますが、明るいところでは光の量を減らそうと瞳孔を縮めます。パソコンなどの発光面を長時間見つめる、明るい環境に長時間いることは、瞳孔を縮める虹彩の筋肉がずっと収縮していることになるため、目の疲労の原因となるのです。


目の働きを改めて整理してみると、光を認識するために、目のどの部分に負荷がかかっているのかがわかってきましたね。目の健康を守るためには、この負荷を少しでも軽減してあげることが大切です。
ここからは、各年代の目にとって最適な光環境を具体的に考えていきましょう。


子どもの目
乳幼児の目は、外部からの刺激を受けることで視機能を発達させていきます。
感受性が高い期間を終え安定期に入ってしまうと、大きな変化が見られなくなるため、この時期に受ける刺激が生涯の視機能を左右するといっても過言ではありません。

<目の発達の目安>
eye_shiryoku新生児:視力0.02程度。まだ色彩を認識することができず、世界はモノクロに見えている。
6か月:視力0.1程度。視力が急速に発達する時期であり、ほとんどの色を認識できるようになる。
1歳 :視力0.2程度。立体的に見ることができるようになり、自分との距離感がわかるようになる。
3歳 :視力0.6程度。
6歳 :視力1.0程度。ほとんどの子どもが大人と同等の視力を獲得する。
9歳 :目で見た映像を脳で正しく理解するための訓練期間を終え、目の機能が安定する。


成長期間にある子どもの目は、良い刺激も悪い刺激も非常に吸収しやすい状態です。
以下のポイントについて、光環境の視点から考えてみたいと思います。

<ポイント>
視機能の発達に必要となる、“良い刺激”とは?



コントラストが“良い刺激”になる

eye_contrast視力が弱く、立体視が備わっていない赤ちゃんは、すべてがぼんやりと平らな世界に見えています。
その中で、はっきりとした明暗や色のコントラストがきっかけとなり、物の形の区別や距離感、焦点を合わせることなどを学んでいきます。言い換えると、コントラストという“良い刺激”を意識的に空間に生み出すことで、視機能の発達を後押しすることが可能になるのです。
例えば、複数の光源によって隈なく照らされている空間や、間接照明のみで構成されている空間などは、コントラストとなる影がほとんど出ないため、視機能の発達を促すという点ではあまり望ましくありません。部屋全体が真っ白で、照り返しを起こしてしまうような空間も同様です。
「光が当たっている面は明るく、当たっていない面は暗い。光を遮ると影が落ちる。」という当たり前の見え方が、目の発達には効果的なのです。太陽のように単一の点光源を設置する、もしくは、スポットライトなどを用いて照らす物をはっきり決めることで、陰影のコントラストが明確になります。また、天井を見ている時間が長い乳児のためには、天井に凹凸となる造作を設置することで、陰影の変化を生み出すことも有効かもしれませんね。



教室での光環境に要注意

eye_school小学生になり、目の機能が安定した後も、注意が必要です。
「目の疲労のしくみ」のなかでご紹介したように、明るすぎる環境に長時間いることは目の疲労の原因となります。特に、子どもの目の水晶体は大人よりも透き通っているため、透過する光の量が多く、紫外線による影響も受けやすくなっています。
教室においては、窓側に座っている子どもと廊下側に座っている子どもで、目に入ってくる光の量が大きく異なります。文部科学省の学校環境衛生基準では「教室及び黒板のそれぞれの最大照度と最小照度の比は、10:1を超えないことが望ましい」とされていますが、大切な子どもたちの目にとって10:1という差はあまりに大きいものかもしれません。
時間帯に応じてカーテンやブラインドを利用し、窓からの太陽光を適切に制御しましょう。教室内のどの机でも均一な光環境をつくり出すことが、子どもたちの10年後、20年後の目の健康を守ることにつながるはずです。
また、近年では、電子黒板やタブレットPCなどのデジタル教材を活用した授業も積極的に行われています。VDT作業に配慮した光環境については第2回でくわしくご紹介しますので、ぜひ教室にも応用してみてくださいね。
※VDT(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)作業とは…
パソコンなどのディスプレイを使用した作業。長時間の作業により、目や身体、心に影響のでる病気をVDT症候群という。



第2回のテーマは「大人の目」です。
長時間パソコンと向き合う「働く目」を守る方法、さらに、「老眼」にとって見やすい光環境について考えてみたいと思います。

eye_idetakeshi井手 武  Takeshi Ide
南青山アイクリニック副院長

大阪大学医学部卒業。大阪大学眼科学教室、大阪警察病院、大阪大学大学院医学系研究科(医学博士)、Miami大学留学を経て、南青山アイクリニック勤務。
レーシックはもちろんのこと、フェイキックIOLや円錐角膜手術まで、多岐にわたる手術を手がける。研究論文も多数執筆。
また、JINSPCの開発にも携わり、ブルーライト研究の第一人者としても多方面で活躍中。

 

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目次
第1回 目の健康を守る光 ―「子どもの目」編―

第2回 目の健康を守る光 ―「働く目」「老眼」編―

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