大切なのは「輝度」2016.05.11

2016年6月に発表される、照明環境における「新しい規準1)」について、全3回でお届けしています。
第2回は、新しい規準のポイントとなる「輝度」についてくわしくご紹介します。

1)日本建築学会環境基準 照明環境規準(AIJES-L0002-2016)
大切なのは「輝度」

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目次
第1回 正しく理解していますか?JIS照明基準

第2回 大切なのは「輝度」

第3回 新しい規準:アンビエント照明とターゲット照明

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第2回 大切なのは「輝度」

第1回で、照明計画とは「空間に適切な“明るさ”を配分する」ことだとお伝えしましたが、そもそも“明るさ”とは何でしょうか?ここで原点に立ち返り、考えてみたいと思います。


照度 ≠ 私たちが感じている明るさ
私たちは、光環境を評価する際に、専門家であるか否かに関わらず、「明るい」「暗い」という言葉を使っています。しかし、「明るい」「暗い」という言葉のままでは個人の感覚の差や曖昧さが含まれています。
そこで、“明るさ”を心理物理量として数値化したのが「照度」と「輝度」です。

照度
単位面積当たりに入射する光の量。単位はlx(ルクス)。
光源によって照らされている面の明るさの程度を表す。

 

輝度
光源や被照面が発するある方向への光度を、その方向への見かけ上の面積で割った値。単位はcd/m2(カンデラ毎平方メートル)。
人の目に入る光の量を表す。


照度は「ある面にどれだけの光が到達しているか」を表しているのに対し、輝度は「その面から反射された光が、ある方向から見ている人の目にどれだけ届いているか」を表しています。
現在の照明計画で一般的に用いられているのは、水平面(机上面や床面など)の照度分布ですが、私たちが実際に感じている“明るさ”を表現しているのは、照度分布ではなく、輝度分布だといえます。
「照度」と「輝度」の比較表
輝度分布というと少し難しく感じるかもしれませんが、“白黒写真”を想像してみてください。
写真の白い部分ほど輝度が高く、黒い部分ほど輝度が低いということになります。内装材の色によって輝度がどのように変化するかも想像しやすくなるのではないでしょうか。


輝度を扱う、その前に
輝度を扱う上で、知っておきたい言葉をご紹介します。

○輝度対比
薄暗い場所だと文字を読みづらく感じるように、私たちの目が視対象を認識するには、視対象とその背景に一定以上の輝度の違いが必要です。この違いを比で表したものが「輝度対比」であり、違いを認識できる輝度の増分を「識別閾」といいます。
輝度対比は、明視性や明るさの感じ方を大きく左右します。同じ輝度の視対象であっても、背景輝度が高いと対象は暗く見え、反対に背景輝度が低いと明るく見えます。

○グレア
たとえば、夜間、車を運転しているときに対向車のヘッドライトの光が目に入ると、目がくらみ近くの歩行者が見えにくくなります。このように、極端に強すぎる輝度によって、見え方の低下や不快感が生じる現象を「グレア」といいます。
グレアは照明環境の快適性を損なうため、グレアが起きないよう輝度が制限された照明器具なども開発されています。



輝度の設計によってできること
照度分布ではわからなかったことが、輝度分布を用いると見えてきます。
ここでは、輝度の設計によって“できるようになること”を具体的にご紹介します。

(1) 明るさ感の向上

人間の視線は、下(=床などの水平面)ではなく前方(=壁などの鉛直面)に向けられていることが多いのではないでしょうか。
つまり、床ではなく壁や柱を重点的に照らすことで、私たちが目にする明るい面を増やし、空間の“明るさ感”を向上させることができます。

明るさ感

 

(2) きらめきの演出
シャンデリアや夜景は近くで見るとまぶしく感じますが、遠くから見ると美しくきらめいて見えます。
このように、たくさんの細かくて強い輝度の変化によって、意識的にきらめきをつくり出すことが可能です。
きらめきの演出は、ジュエリーや眼鏡・車など、光を強く反射する商品を取り扱う店舗で、効果的に採用されています。
シャンデリア

 

(3) 境界を消す

私たちの目が視対象を認識するには一定以上の輝度対比が必要ですが、反対に輝度対比を小さくすることで、対象のエッジをぼかし、“境界を消す”ことが可能になります。
ミース・ファン・デル・ローエ設計のファンズワース邸は、入口手前から見ると、真っ白な天井とその背景に広がる空の輝度がほぼ等しくなっています。これにより、通常感じるはずの建物と屋外との境界線がぼやけ、ファンズワース邸の魅力の一つである「内外の連続性」をつくり出しています。

参考文献:『光の建築を読み解く』 日本建築学会編 / 彰国社、2015年



これからの照明計画
お伝えしているように、見た目の明るさを表現するには照度ではなく、輝度が有効です。
それにも関わらず、照明計画で照度分布が用いられてきた背景には、輝度計算の難しさがあります。輝度は、視点と視線方向を決定しないと定義できないため、計画段階で一般的に扱うのは困難でした。

しかし、近年の照明シミュレーションソフトの発達により、私たちでも簡易計算による輝度分布の算出が可能になりました。これにより、計画段階から輝度分布での検証を積極的に行うことで、計画と現実空間とのギャップを埋めることができるでしょう。

いよいよ第3回では、本題である「新しい規準」の内容についてご紹介します。
新しい規準は、今回ご紹介した輝度分布による照明環境の検討を重視し、アンビエント照明・ターゲット照明という新しい理念が登場します。

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目次
第1回 正しく理解していますか?JIS照明基準

第2回 大切なのは「輝度」

第3回 新しい規準:アンビエント照明とターゲット照明

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