伸縮する空間 <後編>2015.02.13

同じ空間なのに、光を変えるだけで広く感じたり狭く感じたり…。その様子はまるで空間が“ 伸び縮み ”しているかのようです。
今回の実験の先生は、照明デザイナー 戸恒浩人さん。
前編は、「空間の奥行」に焦点を当て、光によって“奥の部屋に行く”という行動をデザインする手法をご紹介しました。
後編では、さらに、ハイライト、ユニバーサルダウンライト、間接照明、…と光の種類を増やしながら、照明デザイナーの思考に迫りたいと思います。
前編はこちら
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協力:有限会社シリウスライティングオフィス



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■実験内容
「 光による空間の伸縮を体感しよう 」

(1) 空間の奥行 編   → 前編へ
(2) 光の重心 編
(3) 空間の広がり 編


・参加者:80名
・実験方法

3つの部屋に分けた空間において、光のデザインの組み合わせが異なる8シーンを用意。“奥の部屋に行く”という観点から、見て感じたことをフリーワードで評価する。


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さて、後編のキーワードは「光の重心」と「空間の広がり」です。
実験するのは以下の8シーン。光の種類も増え、より演出を意識した空間が登場しているようですね。

(2) 光の重心 編
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(3) 空間の広がり 編
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(2) 光の重心 編
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戸恒さんのコメント
基本形。
光が床を照らしつつ、壁も照らしている。



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戸恒さんのコメント
床だけが輝いているので、空間がグッと沈む。
これを「光の重心」という言葉を使って説明することがある。
壁面の認識が薄くなり、光が床をずっと走っていく印象。



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戸恒さんのコメント
奥は特別な演出をしているわけではなく、ベースをつけているだけだが、奥で待っていてくれるような印象。
光の重心を“ 下、下、真ん中(ベース)”にするだけでも、奥行感が出る。
天井を感じさせたくない空間で奥行感を出すときに使う手法。



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戸恒さんのコメント
美術館のような空間。
目線の高さが明るいので、光の重心はかなり高い。



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戸恒さんのコメント
演出的な印象。光の重心は低くなった。
壁の下にソファや物があったときに、壁も一緒に照らしつつ印象付けることができる。
壁を演出的に見せたいなと思うけれど、空間構成の重心が低いときに使う手法。



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戸恒さんのコメント
低い印象を保ったまま、誘導効果を出したいときに使う手法。



(3) 空間の広がり 編
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戸恒さんのコメント
横方向に空間が広がる。横に広がった分、奥行がなくなった印象。
奥への引力よりも、横を見てしまう引力の方が強い。
間接照明を入れるとすべての空間がきれいになるということではなく、人の動線とセットで考えなければいけない。



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戸恒さんのコメント
奥にほっとする明るさができ、空間の広がりを把握することができる。
人間は暗いことが不安につながる場合が非常に多い。
全体の領域感をつくりあげることで、心地よさにつながる安心感を与えることができる。



光は空間を“ 伸縮 ”させる力がある、ということを体感した今回の実験。
同じ空間でも、光を変えることで、広さや奥への引力、安心感など、私たちの感じ方はこんなにも変わるんですね。
戸恒さんが語る具体的な手法は、光が、人の心理や動線をデザインする有効なツールであることを示してくれています。



戸恒浩人  Hirohito Totsune
照明デザイナー
1975年東京都生まれ。東京大学工学部建築学科卒。
1997~2004年 株式会社 ライティング プランナーズ アソシエーツ、2005年 有限会社シリウスライティングオフィス設立、代表取締役。
都市照明・商業施設・住宅・病院などの照明のデザイン及びコンサルティングを手がける。2011年、2013年 IALD(国際照明デザイナー協会)Awards of Merit 受賞、2013年 ICC Light and Music Showにて世界最大のファサードライティングショーとしてギネスを取得。
主なプロジェクトは、情緒障害児短期治療施設、日本経済新聞社東京本社ビル、武蔵野美術大学 美術館・図書館、東京スカイツリーなど。