伸縮する空間 <前編>2015.02.13

今回の実験の先生は、東京スカイツリーの照明計画で知られる照明デザイナー 戸恒浩人さん。
ベース照明、ウォールウォッシャー、ハイライト、間接照明、…光のデザインにはさまざまな手法がありますが、それらの組み合わせを変えることで、空間の奥行や重心の感じ方は大きく異なります。
光を変えているだけなのに、その様子はまるで空間が“ 伸び縮み ”しているかのよう…
この実験、実は2007年に行ったのですが、今見てもやっぱり面白い!ということで、<前編><後編>に分けて、改めてご紹介します。
照明デザイナーの思考の一端を垣間見ることができますよ。
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協力:有限会社シリウスライティングオフィス



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■実験内容
「 光による空間の伸縮を体感しよう 」

(1) 空間の奥行 編
(2) 光の重心 編     → 後編へ
(3) 空間の広がり 編   → 後編へ


・参加者:80名
・実験方法

3つの部屋に分けた空間において、光のデザインの組み合わせが異なる7シーンを用意。“奥の部屋に行く”という観点から、見て感じたことをフリーワードで評価する。


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さあ、実験するのは以下の7シーンです。「空間の奥行」に注目して見てみましょう。
奥の部屋へ呼ばれているような空間もあれば、なんだか奥までずいぶん遠く感じる空間も…。

(1) 空間の奥行 編
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戸恒さんのコメント
一番ニュートラルな空間。何でもない自然な空間。
この自然というのが非常に大事で、何もしない空間というのは我々にとって大切なツール。
何でもない空間をつくることで、中のデザインしたものが引き立つ。



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戸恒さんのコメント
壁面が明るいので、人間の眼はキャッチしやすい。
結果的に真ん中の部屋、手前の部屋の存在感は希薄になって、明るい奥の部屋に誘われる。
奥を明るくすることで誘導効果が高く、同時に空間がグッと奥にもっていかれる印象となる。



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戸恒さんのコメント
演出効果の高いウォールウォッシャーをつけたのに、かえって印象が薄くなってしまった。
演出効果の高いものを重ねると、中途半端で平凡なものになってしまう。



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戸恒さんのコメント
美術館のような空間。
全部が均一なウォールウォッシャーになると、奥行感はなくなる。



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戸恒さんのコメント
一番奥には行きたくない、真ん中の空間に行きたい、と思いませんか?
奥の空間は言われなければ気づかないかもしれない。かなり空間が狭くなる。
手前に誘導したいときは、このような手法を使う。



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戸恒さんのコメント
途中が暗いことで、グッと奥までもっていかれる印象。
真ん中の空間は暗いというより、どうでもよい空間となる。
長い動線で途中があまり面白くないときに、わざと暗くする。そうすると人の意識はワープする。



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戸恒さんのコメント
向こうに行きたいと思っていた矢印が逆向きに働く。
奥に行きたくない。今自分たちがいる空間が非常に大切な空間で、奥はそうでもない空間。
例えば、展覧会で出口に向かうような印象。



これらの7シーン、使用したのは「ベースダウンライト」と「ウォールウォッシャー」の2種類のみですが、光の組み合わせによって印象は大きく異なります。
動線を明確にする光、空間にリズムを生む光、…
光ごとに異なるストーリーを想像することができますね。

後編では、ハイライト、ユニバーサルダウンライト、間接照明、…と光の種類を増やし、(2) 光の重心 編、(3) 空間の広がり 編 をご紹介します。照明デザインの手法をさらに掘り下げてみましょう!
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